哲学を楽しみながら入門知識に触れたい人のための超おすすめ本4冊




哲学の知見には触れてみたいが、なかなか哲学書そのものを読むだけの脳みその体力が無い。おそらくこれが一般的な現実でしょう。でも哲学という言葉の持つ何か上段から構えた言葉には、とても魅惑的で危険なものに触れたくなるような力があります。

ここではその哲学の世界の入門的な知識を得られれ、しかも楽しみながら読めるおすすめ本4冊を紹介します。もちろん私の独断と偏見でのチョイスです。

ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のことを教えてくれた。

まずはこれ。『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のことを教えてくれた。』です。

「ニー晢」と略されて親しまれている本で、著者は元男装アイドルでレースクイーンの経験もある原田まりるさん。とにかく設定がハチャメチャで、現実世界と異世界の交差点に立ってるような印象です。こう書くと批判的に見えるかもしれませんがそうではなく、そこが楽しいわけです。以前、この本の感想も書きましたね。

扱ってる内容は実存主義哲学と言われる分野が中心です。おそらく「哲学」を人生論と重ねる人の頭の中で連想されるのがこの分野だと思います。と同時に説教臭くて眠くなるのが「哲学」だと毛嫌いされるのがこの分野でもあるでしょう。

なぜ京都やねん? なぜ過去の哲学者がいるねん? という謎は全く明かされることはありません。まるでマンガやアニメを見てるかのようなストーリーで、しかもいろんなところにオタクちっくなツボにハマるセリフが出てきますので、哲学だけでなくエンタメとして読めること間違いなしです。

先ほども触れましたが実存主義中心であるので、哲学の長い歴史の全体を扱っているわけでは無いのが残念ですが、眠くなることなく一気に読める哲学エンタメ小説となっています。哲学入門をまさに楽しめる1冊です。

史上最強の哲学入門

次は飲茶さんの書いた『史上最強の哲学入門』です。「ニー哲」のようなエンタメ的な香りを持ち込みつつ、扱ってる内容は至って正統派と言っていいでしょう。

これは「ニー哲」と違って、古代から現代までの西洋哲学の大きな流れを触れることができます。もちろん全てを語る哲学書ではありません。扱っていない哲学者ももちろんあります。触れている哲学者の思想についても事細かな概念まで説明しているわけではありません。詳しい人からすれば「この哲学者ならこの話題も必要なのでは?」と感じる人もいるでしょう。

ですが、哲学全てを語るのではなく、人物も思想も徹底的に削ぎ落としたところにこの本のわかりやすさがあります。「真理」「国家」「神」「存在」というテーマについて、西洋哲学を古代ギリシアから現代まで疾走します。

あと、まえがきの哲学者入場シーンの描写は、ネットでも知る人ぞ知る有名なテキストです。この本の世界観が凝縮されています。まさに「バキ」です。

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち

哲学というと西洋哲学ばかりが連想されますが、東洋の思想も忘れてはいけません。

そこで次に採り上げるのが『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』です。これも飲茶さんの書いた本で、先の西洋哲学に対する東洋哲学編になりますね。

我々が東洋世界に住む日本人だから思想的なベースが歴史的に染み付いているからかもしれませんが、おそらくこの順番に読んで感じることは、西洋哲学が長い歴史の中で到達してきたものはすでに東洋哲学では古代の時点で到達しているという感覚です。西洋哲学編を読んでこちらに進むと腑に落ちるという人も多いのでは無いかと感じられます。東洋哲学の摩訶不思議。西洋哲学の一歩一歩進んで積み上げていくような感覚は無く、一気に本質に対面するという感じ。それを説明するには言葉が足りない。その言葉に格闘してきたのが西洋哲学。そんな感じでしょうか。

敢えて残念なポイントをいうなら、こちらには西洋編と違って哲学者の入場シーンの描写が無いところくらいですね。

とにかくこの本は東洋哲学を一気に疾走できますよ。日本の思想にも触れられていますよ。

世界十五大哲学

最後は少しだけ教科書ちっくな硬めの哲学入門書をおすすめしておきます。大井正・寺沢恒信『世界十五大哲学』です。

これは文庫として復刊されるにあたって、元外交官の佐藤優さんが推薦の帯と「復刊によせて」の文章が掲載されています。

この本の第1部で哲学の方法論と哲学思想史概説が述べられています。そして第2部において、ソクラテス、プラトン、アリストテレス、トマス・アクィナス、デカルト、ロック、ディドロ、カント、ヘーゲル、キルケゴール、マルクス(エンゲルス)、チェルヌィシェフスキー、中江兆民、デューイ、サルトルが採り上げられています。

扱っている哲学者の名前を見てもらえばわかりますが、もともとは今となっては古い本であるので、現代哲学のヒーローのような人物は出てきません。実はこれがこの本の良さです。

佐藤優氏は本書冒頭の「復刊によせて」でこう書いています。

哲学、神学、現代思想の関心を持つ大学生や、すでに職業研究となっている若手と議論をすると、デリダ、フーコー、ラカン、ハーバーマス、ルーマンなど現代の哲学者、思想家に関する著作はよく読んでいるが、哲学史の基本的知識に欠けている為に、話を聞いていると「これで大丈夫か」と不安になってくることがある。四則演算が怪しく、因数分解ができない人が、微分方程式の本を読んでも理解できない。哲学もそれと同じであるのだが、どうもそのことがよく理解されていないようである。

レトリック(修辞)で、気の利いた発言をすることは少し勘がよい人ならば誰にでもできる。しかし、思いつきを、筋道をたてて整理して、きちんとした考えにまとめるためには、哲学的な基礎訓練が不可欠だ。そのような基礎訓練のために本書は役に立つ。

本書をおすすめする理由はこの文章に尽きますね。ただ、最近の佐藤優氏の教養押し付け商売は気に入りません。なんやかんやとあちこちの教養的な本の帯には佐藤優の名前が使われているのを目にします。他に教養を語れる人間はいないのか?

どうせ読むなら基礎的訓練というか、しっかりとした教養まで持っていきたいものですよね。ですから、他にも入門書として読みやすいものはたくさんありますが、敢えてこの1冊を最後に持ってきました。

まとめ

哲学入門のおすすめ本として4冊を採り上げてみました。この順番に読んでみるのがストレスなく頭の体操になるのではないでしょうか。この後はこれにとどまらずに、より専門的な本や、哲学の古典そのものに触れてみることをおすすめします。