昨年11月30日に93歳で亡くなった漫画家・水木しげるさんのお別れ会が1月31日に青山葬儀所で営まれた模様がテレビのニュースなどに流れていました。
ちょうど現代ビジネスに「水木しげる、最後のインタビュー」という記事が掲載されていたのですが、水木しげるはこれほどまでにゲーテなのかと、読んでみるととても興味深い。(水木ファンには当然の話なのかもしれませんが)
水木しげるといえば、私は「ゲゲゲの鬼太郎」くらいしか基本的に知らないのですが、最近、京極夏彦の本にハマって読んでいたら、水木しげるの描いた世界や存在を強く感じて今更ながら関心を持ったところです。
ゲーテを読みたくさせる水木しげる
このインタビューは水木さんの『ゲゲゲのゲーテ』という本と関わっています。
生死について、人間について、自分が抱えていた疑問に答えてくれたのは、ゲーテの言葉だった
この記事を読んで感じたことを一言で言うなら「これくらい私もゲーテを読み込みたい」ということに尽きます。
ゲーテの言葉を扱った本はいろいろ出ていますが、私がゲーテの言葉に具体的に触れたのは齋藤孝さんの『座右のゲーテ』という本でした。
月並みな言葉ですが、ゲーテには本当に響いてくる言葉が多いのです。単にモチベーションが上がるような軽い言葉ではなくて、水木しげるさんが言うように「ゲーテはひとまわり人間が大きい」というのを圧倒的に感じるのです。
カントだとかヘーゲル、ニーチェ、ショーペンハウエルだとかも、よさそうなので読みましたけど、やっぱりゲーテは全体的に大きくて、頼りになるって感じでしたね。
水木さんの話は昨今の日本のニーチェブームに対するアンチテーゼでもあるような気がします。
日本ではニーチェ的な考え方はあまり上手くいかないのと違いますか。ニーチェというのは他人に勝たなけりゃいかんという苦しい考え方をして、大騒ぎしてるからねえ。
手軽に言葉を手にしたいと思ったので、『ゲーテ格言集』も手に取りました。
ツイッターで格言集botを作りたくなるような言葉がいっぱいなわけです。
ただ、どういう流れの中で使われた言葉なのか、やはり引用集ではなく引用元の書籍を読みたくなりました。
君は『ゲーテとの対話』をボロボロになるまで読めるか?
それが、このインタビュー記事に出てくる本、水木しげるさんの愛読書と言われているエッカーマン著『ゲーテとの対話』です。
水木さんはこの本を戦地へも持って行ったそうです。生死と背中あわせの中、読む暇はほとんどなかったそうですが。記事にはびっしり線の引かれたページの写真があります。こういう本の汚れた姿はとても美しい。
これは、私も本当にオススメしたい1冊です。
自己啓発書を読むな!ゲーテを読め!
下手な自己啓発書なんか読む必要は無いと感じることでしょう。人間が生きる上での本質的な話がこれでもかというくらい詰まっています。
エッカーマンがゲーテと一緒に過ごした日々のやりとりや言葉が記されているわけですが、ゲーテがエッカーマンに語ることを通して読者はゲーテから教えを受けることができると言っていいような内容です。
仕事術や勉強法、時間術、人生哲学など現在売られているビジネス書は様々ありますが、この『ゲーテとの対話』だけしっかり読めば今売られている自己啓発書の類の本は要らない。そう感じてしまうほどです。
しっかり読み込んで、自分にとって大切な言葉を自分自身の力で引っ張りだすべき本だと思います。
岩波文庫で3冊というボリュームで、日付のついた記録でもあるので、全体としてまとまったテーマとして書かれたものではありません。ですから、ちょっと読みにくい面はあるかもしれませんが、ゆっくり、じっくり読めばいい本だと思います。
ここは自分のお気に入りのゲーテの言葉でも幾つか紹介しても良かったのですが、あえてここでは何も引用しません。
自分にとっての黄金の言葉を発掘しましょう。『ゲゲゲのゲーテ』から入ってもいいので是非『ゲーテとの対話』にも進んで欲しいです。古典の力を感じる1冊であること間違い無し。