最近読んだ本の中で、刺激的な本ってこういう本のことなのだと感じたのがこの3冊です。
『未来に先回りする思考法』と『ゼロ・トゥ・ワン』と『無敵の仕事術』です。
どれも最初は全く読む気はありませんでした。タイトルだけ見て判断して「こういうのはもう読まなくていいかな」って思っていたくらいですから。
ところが読んでみると偏見的に持っていた評価は全くの見当違い。知的好奇心をそそられるし、哲学的な実践を感じられるし、何よりもイマイチ弾けきれない日本の産業に再び命を吹き込んでくれるような内容だと思えるほどとても良い刺激を得ることができました。
どれも最初は全く買う気はなく、うち2冊は楽天のポイントの利用期限が迫っていたのでそのポイント消化目的で楽天koboを利用して電子書籍を買った程度のものでした。
本来は紙の本を好んで買うのですが、こういうポイント消化では内容はどうでもいいかなと思えるような、とりあえず暇つぶしに読んでみるといった考えでの購入でした。
ところが、紙の本でも持っていたいと思ったほどのものでした。こういう知的好奇心を刺激する本は大好きです。
個別の内容について細かく触れることはまた別の機会にしたいと思いますが、それぞれ簡単にコメントを残しておきたいと思います。
まずは『未来に先回りする思考法』です。著者はIT企業の株式会社メタップス代表取締役社長。
よく歴史はくりかえすと言います。
文明の転換点というと大げさかもしれませんが、そのような大きな時代のうねりをどのように掴むのかがこの本でいう未来への先回り方という感じがします。
単なる流行をちょっと先取りするというものではなく、人類の進化の過程や産業革命が歴史にどうインパクトを与えたかと言った単なるトレンドでは説明できないところに視点を置く内容にとても知的刺激を受けました。
歴史のアナロジーをここまで大きなうねりの中で捉えたビジネス視点って珍しいのではないかと思います。
次は『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』です。著者はPayPalを共同創業して会長兼CEOに就任し、2002年に15億ドルでeBayに売却した、シリコンバレーで現在もっとも注目される起業家、投資家のひとり。
ゼロから一歩でも小さな歩みを踏み出しましょう的なよくある自己啓発書かと思ってたら全くの誤解でした。
新しいビジネスをどう起こすか。それも単に成功するというレベルではなく、圧倒的な市場支配力をもったビジネス構築。経済学的に言えば、競争経済で追加的利益が逓減していくようなビジネスではなく、独占市場の理論であって圧倒的な利益を生み出すというまさに化けるビジネスの考え方。
小さな一歩ではなく、デカイ一発をぶちかますと言ったところですが、本来世の中を変えるようなこれまで見たこともの無いビジネスとはやはりそういうものでしょう。こういうものを本当のリスクテイクというのでしょうが、最近のビジネスにおける新サービスが非常にこじんまりとしていて、今あるものの改良や、小さなテストを多数行った中で上手く行ったものに集中していくといったものであることに、スケールの小ささとすぐに他のものの中に埋もれてしまうような状況に警鐘を鳴らしているように思えます。
Facebookはもう一つ必要ないし、Appleが2つあっても仕方がない。ゼロから1を生み出すダイナミズムを突きつけてくれる本です。あなたが今携わっている企画を根本的に見直したくなるのではないかと思います。
最後は『無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える! (文春新書)』で、著者は世界一のヒト型ロボットをグーグルに売った東大発ベンチャー・シャフト元CFOです。
「仕事術」とタイトルにあると小手先のスキル(もちろん効率的に仕事を消化できるなどメリットのあるものも多いのですが)のように思えて嫌悪感を覚えてくるようになっていました。
効率化されるだけで、他のところはあまり変わらないのであれば世界に大きな変化は見られないわけです。
ところがこの本はそういう仕事術では全くなかった。使命感が湧き上がるような日本を飛躍させたいビジョンに溢れる本で、読んでいるこちらも引きずり込まれます。
悔しいことに、この著者の二足歩行ロボットの会社はGoogleによって買収された。これはすごいことで著者の思いが実現できることへの達成感が伝わってくると同時に、どうして日本ではこういう次の世界を作り出せるような技術に投資がされないとかという苛立ちと、だからこそ日本でなんとかしたいという思いが伝わってきます。そういう閉塞感を感じる日本であっても、どこかに突破口が見つかる瞬間がある。だから諦めきれないって思いがひしひしと伝わって来る本です。上記の『ゼロ・トゥ・ワン』にも通じるものがあります。
SHARPの落日、東芝の巨額赤字決算、三菱自工の燃費不正など「日本はどうなってるんだ?」と感じてしまうものですが、そんな状況を変えてくれるヒントがこれらの3冊からは強く感じます。
ベンチャーのあり方も含めて、日本の産業や経済をなんとかしたいと思うこと間違い無しの本たちでした。
マジで超オススメの3冊です。