飲茶 著『史上最強の哲学入門』は知の格闘技入門者ための最高の指南書である

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史上最強の哲学入門

気になる書籍が昨年秋頃に文庫になっていました。

気になっていたのですが、なかなか手を出せずにいたのです。

しかし我慢できずに先日買ってしまいました。

それは、飲茶 著『史上最強の哲学入門』です。


史上最強の哲学入門 (河出文庫)

まあ、これまで手を出さなかったのは、他の本を優先的に買いたかっただけということもあるのですけど、「哲学の入門書はもう読まなくてもいいかな?」とも思っていた面もあるからです。

哲学は学生以来ちょくちょく入門書的なものをかじっては、古典に挑戦しその巨大な壁に追い返されるという読書を繰り返しています。なので、ある程度はこれまで読んできてはいるわけですので、入門書よりも古典そのものをという意識が今が強かったからです。(最近は光文社古典新訳文庫の『純粋理性批判』で眠気と格闘中)

体系的な知識は持ち合わせてはいませんが、そこそこ読んで楽しむ、哲学的な思考に頭を慣らせる、そんな感覚は少しは身についた感じ。実際の世の中を考える上でも、ちょっとした考える材料になることも実感するわけです。(これぞ古典の力)

さて、この本。飲茶 著『史上最強の哲学入門』ですが、内容の前に、著者の名前が記憶に残っていたことの方が私には大きかったですね。

何年も前のことですが、ネットサーフィンをしていた時に偶然とあるホームページにたどりつきました。

そこには、熱気あふれる格闘場に流れる場内アナウンス!(といってもテキストですが)

そこへ次々と紹介される格闘家の名前。

そこに登場するのはなぜか哲学者たちだった。

神神殺しは生きていた!! 更なる研鑽を積み人間狂気が甦った!!
超人!! ニーチェだァ――――!!!

引用元:史上最大の哲学議論大会

こういうノリで知の格闘家が続々と登場してくるこのホームページにたどりついていたわけです。

なんのノリだと思ったら、サイトにもあるように『グラップラー刃牙』のパロディー。まさに地の格闘技なわけですね。こういうノリは大好き。

このサイトの印象が強烈に頭に残っていたわけです。(当時はこういうテキストベースのホームページで存在感のあるものが多かったですね。『侍魂』の「先行者」などもそうでしょう)

この当時の印象の強烈さ故に、とうとうこの文庫に手を出してしまいました。

ちなみにこのアナウンスは『史上最強の哲学入門』のまえがきでも再現されてます。

さて、内容です。「真理」についての4ラウンド構成で話が進みます。

真理の『真理』
国家の『真理』
神様の『真理』
存在の『真理』

この4ラウンド構成が読んでいて本当に腑に落ちました。

哲学の入門書といえば、おそらく大部分が哲学史のような構成になって、ソクラテスらのギリシャ哲学に始まり、宗教をどう捉えるかのアウグスティヌスらの中世哲学、理性の時代のデカルトらの近代哲学、近代批判としてのハイデガーなどの現代哲学と進んでいくものがほとんどでしょう。

そうなると、ゼロから一つひとつ積み上げていくことになり、網羅的な哲学入門書になってしまうわけです。てんこ盛り。故にわけがわからなくなる。一人の哲学者もいろんな概念を提示してるわけで、そうなると全体がどう繋がっているのか、入門者にとってはわからなくなる。最後に記憶に残るのは紹介された哲学者の名言だけといったことにもなったりするわけです。

ところがこの本はちょっと違う。

先に挙げた4ラウンドの『真理』に関して、それぞれギリシャから始まり現代に至る流れになっています。1冊で古代から現代までの4回廻るわけです。それぞれ疾走感があり、とても心地よい。

一般の入門書では細かくあれこれと欲張って触れすぎるので、何について語っているのかがわからないくなるのですが、この本は先の4つ話題をテーマとしてそこから離れることがありません。だから、何について格闘しているのか常に意識することができます。

しかも、必要以上にテクニカルタームを盛り込むことをしていないので、哲学用語に悩まされることも少ないです。通常の哲学書はこのあたりの専門用語を網羅したがって読者に読むことの困難さを与えてしまうんですよね。

また、本書と同じように哲学的テーマを扱った入門書もあるわけですが、それはテーマが優先されて扱われる哲学者や哲学思想が順不同のように出てきたりします。テーマだけを掘り下げようとしたくなるからでしょう。なのでそれぞれの哲学者の関係が不鮮明に感じたりするわけです。

このあたりの不満、理解のし辛さを、本書は吹き飛ばしてくれるのです。

それぞれのテーマを古代から現代まで、どのように受け継いで考えを巡らせてきたか。扱われた哲学者の概念を引き継ぐ形で次の哲学者が扱われ、現代まで一気に到達します。

それを4テーマ。ですから、歴史的な流れを4回扱うことになるので、通史として一回ゆっくり学ぶよりも、時代の流れを復習しながら読めるという感覚でもあるんですよね。

4つの課題を通して、哲学史を4回流す。この過程でそれぞれが繋がっていく感じになるのです。マジで読みやすい。

そして最もこの本の肝といっていいのかもしれないと感じていることは、それぞれ扱われている哲学者の思想を全て紹介していないというところです。飽くまでも4つのテーマに関わることしかほとんど触れない。

「この哲学者なら、この概念を説明するのが当然だと思うのだけど、それがないのはどうして?」

こんな意見を詳しい人などは述べるかもしれませんが、そこが本書の良いところでもあります。4つの格闘しか扱っていないのですからね。

個々の哲学者の思想の詳細は必要なところ以外は一切無視。戦いに必要なもの以外はそぎ落としているわけです。(ソシュールのシニフィアン、シニフィエとか、フッサールのノエシス、ノエマとか言ったって、そりゃ入門者にとっては「何それ?美味しいの?」くらいにしかなりませんからね)

難しい哲学(用語)をありがたいものとして語る本ではなく、哲学者による知の格闘の歴史をたっぷり味わえる本です。タイトルの通り『史上最強』の哲学入門書だと思います。難しいキーワードで煙に巻く哲学書を読んで挫折した人には特におすすめしますね。

ところで、哲学界における範馬刃牙は誰になるだろう?範馬勇次郎は?愚地独歩や花山薫は?

徳川光成になったつもりで闘技場の上から哲学を眺めるてみてはどうでしょう。

マジでめちゃいいよ、これ。

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