真剣さと意思決定の重要さを痛感!伊藤祐靖 著『国のために死ねるか』茹でガエルになる前に読むべき1冊

イージス艦




タイトルで敬遠しちゃいけない本ですよ。

ちょっと読み進めただけで、頭をガツンと殴られてた思いがする本です。

こんなに一気に読めるにも関わらず、とてつもなく重たい気分になる本は滅多に無いのでは無いでしょうか。

ここ数年、中国の公船が尖閣諸島周辺の我が国の領海を侵犯することが増え、ここ数日も大量の中国漁船とともに日本の国防体制を挑発しているニュースに、日本はどう動くべきかはっきり出来ない状況にイライラしている人も多いでしょう。

この国の安全保障について、自分の頭と筋肉で考えないといけないと痛感します。

安全保障問題ではなく人間の根源的な問題

元海上自衛官の伊藤祐靖氏が書いたこの本は、 この時期だからこそ本当にオススメです。

と同時に、安全保障の問題に限らず、人が存在する根源的な意味とはどういうことかなど意識させられますし、プロフェッショナルな仕事とはどういうものかも考えさせられるので、一級品のビジネス書とも捉えることができます。特にリーダーシップ論として十分に価値のある内容だと思います。


国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (文春新書) (文春新書 1069)

タイトルを見ただけで、いろいろなことが思い浮かぶのではないでしょうか。

一見すると、戦前回帰的な特攻を感じさせるようなタイトルでもあります。

いわば、「国のために死ぬ覚悟はあるか?」と捉えることができるわけです。

また、一方で逆の感覚も浮かび上がります。

「こんな国ために死ぬなんてとんでもない。今そんな価値を持つことができる条件があるのか?」とも読むこともできるわけです。

安全なところで声高に叫ぶ違和感を痛感

読み進むうちに、日本で行なわれている安全保障の議論で「戦争法案ガー!」と言ってるのがいかに的外れであるか、また逆に安全保障体制を進める側も何か危機の概念とは遠い場所で議論がなされているのではないかと痛感せずにはいられません。(もちろん現場は命をかけてやっているのですが)

海上自衛隊の特殊部隊を創設した人だけあって、生死に直面するような状況への意識の向け方は茹でガエル状態の生活をしている私たちにとっては、ぶっ飛んでると思えるような思考が投げかけられます。

何かあったら、自分はサバイバルできないな。そんな状況に置かれてるのが日本の現状なのかもしれません。意思決定の重要さを痛感するのです。

震災復興などで自衛隊への国民の信頼は高いと思います。世界的にも士気の高い組織とも言われています。しかし、そんな自衛隊であっても何か肝心なものが足りない危うさを感じてしまいます。

救える力があるならどうするのか?

この本は、1999年に発生した北朝鮮の不審船による日本領海侵犯事件での海上自衛隊初の海上警備行動の記述から始まります。

この部分は以前、ネットの動画などで知っている部分でもありました。当時は想定していない任務のために防弾チョッキが無く、艦内にあったマンガや雑誌を体に巻きつけて不審船に乗り込む準備をしていたということに「え?」と目が点になったことを思い出しました。

映像では一般向けに語るわけで表現は柔らかくなっていたと思いますが、これが文章になりその経緯が細かく描写されているこの部分を読むだけでも日本の持つジレンマを痛感します。だからこそ、「国のために死ねるか」というタイトルの言葉がいきなり突き刺さるのです。

こういう防衛に関する話題の本に感じますけども、自分の生き方、仕事への取り組み方などにも通じる部分が圧倒的に多い本です。

想定外を想定する危機管理

「その状況を想定して訓練する」ということは一般のビジネスでもよくあることでしょう。訓練というと言葉が違うかもしれませんが、何らかの想定をして動くということは、一般の人にとってはよくあることです。

でも、その想定は、想定外を想定していない。危機管理とはどういうものか、究極的なものを考えさせられます。

自衛隊特殊部隊創設者というキーワードが響きますが、それよりも著者が自衛隊を退官してからのインドネシアでの体験を語られる部分の方が、実は考えるべき視点が多いように感じます。それに関連して著者の父親のエピソードも絡みついてきます。

真剣さとは何か、強く感じさせられました。

まっすぐものを見るということも意識させられます。

背筋が伸びるおすすめの本

そのまっすぐとは、別に礼儀正しくとか、素直にとかいうようなことではなく、目的を達成することへの真摯な心構えのようなものでしょうか。

「肉を切らせて骨を断つ」の考えが、頭の中を巡っています。

久しぶりに背筋が伸びる本でした。

太鼓叩いて戦争法案反対と叫んでいる人たちも、憲法9条改正を声高に主張する人々も、そんなことには無関心で日常を送っている人も、絶対に読むべき1冊だと思います。

魂が震えるのを感じる本って滅多にないですよ。